2013年9月
―喫煙は必然?―
昭和30年代後半に小学生だった私は、学校では平和教育を受け、一方、毎週連載の戦争マンガを何の矛盾も感じないで愛読していました。
叔父に一度注意された以外、大人は何も言いませんでしたから。
この小学生にとって、戦闘機と言えばゼロ戦で、堀越二郎の名前は"すごい飛行機を作った人"として、同世代の男子は皆知っていたはずです。
ところが、後輩の医者に聞くと、"そんな人知らない"とのことで、世代間ギャップはあるのです。
というわけで "風立ちぬ" を見てきました。
ジブリ映画初体験でしたが、湿度の低い澄んだ空気が実感できる、それはそれは美しい映画でした。
この映画について、戦争の扱い方にいろいろ意見もあるようですが、もうひとつ意外な批判をネットで目にし、これは行かねば、と思ったのです。
日本禁煙学会というNPOがあり、その団体が この映画は喫煙を"魅力的"に描いているので"影響を熟慮されるよう要望"した とのことです。
要望の当否については見る前から私なりの結論はあったので、むしろ"アニメに何故タバコ?"という疑問を解きたくて映画館に行きました。
たしかに、喫煙シーンが、執拗なくらいに多い。
特に終盤近く、結核が悪化した妻の菜穂子と二郎のやり取り。
外でタバコを吸うと言う二郎。
離れたくない菜穂子に言われるがまま、その場でタバコを吸う。
病室に広がるタバコの煙が(強調されて?)描かれる。
一観客から医師に引き戻されて、"タバコの煙による咳嗽は患部の安静を妨げて喀血を誘発する…。"などと考えたりする。
このザラザラしたシーンの目的は何なのか?
二人のこれからを予感させる大事な場面なのに。
しかし、仕方がないかとも思いました。
殺戮の道具である戦闘機開発。
世間から遊離したような二郎の鈍さ(たぶん確信犯的な)やエゴ。
菜穂子の不治の病気(今はちがいます)。
病気も戦争も、どうすることもできない。
明白な悪でも受容以外選択のない状況の象徴としてのタバコなのか?
じゃあ、仕方ないですね。
そもそも創作に対する"要望"とは、例えば、この赤は刺激が強くて目に悪いので緑にしてくださいと、プロの画家にお願いすることなのか?
これ相当、勇気がいるでしょう。
二郎を悪く言ってしまいましたが、映画の中の二郎は知的で折り目正しく、気弱な外見や声と裏腹に意外と行動的ないい男です。
仕事(呼吸器内科医)を離れても、私は、タバコが嫌いです。
この映画、あえて言うならG指定(年齢制限なし)はまずいでしょう?
R20(20歳以上でないとダメ)ではどうですか?
現実には成人向けのR18はあっても、R20など存在しませんが、タバコだからやはりR20。
たまたま私の隣の席の小学校低学年女子は、映画に集中できなくてお母さんに叱られていました。
期待したようなアニメとちがったのでしょう。
大人にとっても二郎は難解です。
しかし、私はもう一遍見てみたい。
次回はタバコの件は事前に心の中で整理しておいて、還ってこないゼロ戦と、そして菜穂子と二郎のお話に心置きなく没入して、 アニメを見て泣いているみっともないオヤジになりたいです。
隣の女の子も将来大人になって見直すことがあれば、きっと大泣きして自分の成長を実感するはずなので、(タバコに目をつぶれば)、 今回の映画代は無駄ではなかったと思います。
(2013年9月 近畿中央胸部疾患センター 院長 林清二)
昭和30年代後半に小学生だった私は、学校では平和教育を受け、一方、毎週連載の戦争マンガを何の矛盾も感じないで愛読していました。
叔父に一度注意された以外、大人は何も言いませんでしたから。
この小学生にとって、戦闘機と言えばゼロ戦で、堀越二郎の名前は"すごい飛行機を作った人"として、同世代の男子は皆知っていたはずです。
ところが、後輩の医者に聞くと、"そんな人知らない"とのことで、世代間ギャップはあるのです。
というわけで "風立ちぬ" を見てきました。
ジブリ映画初体験でしたが、湿度の低い澄んだ空気が実感できる、それはそれは美しい映画でした。
この映画について、戦争の扱い方にいろいろ意見もあるようですが、もうひとつ意外な批判をネットで目にし、これは行かねば、と思ったのです。
日本禁煙学会というNPOがあり、その団体が この映画は喫煙を"魅力的"に描いているので"影響を熟慮されるよう要望"した とのことです。
要望の当否については見る前から私なりの結論はあったので、むしろ"アニメに何故タバコ?"という疑問を解きたくて映画館に行きました。
たしかに、喫煙シーンが、執拗なくらいに多い。
特に終盤近く、結核が悪化した妻の菜穂子と二郎のやり取り。
外でタバコを吸うと言う二郎。
離れたくない菜穂子に言われるがまま、その場でタバコを吸う。
病室に広がるタバコの煙が(強調されて?)描かれる。
一観客から医師に引き戻されて、"タバコの煙による咳嗽は患部の安静を妨げて喀血を誘発する…。"などと考えたりする。
このザラザラしたシーンの目的は何なのか?
二人のこれからを予感させる大事な場面なのに。
しかし、仕方がないかとも思いました。
殺戮の道具である戦闘機開発。
世間から遊離したような二郎の鈍さ(たぶん確信犯的な)やエゴ。
菜穂子の不治の病気(今はちがいます)。
病気も戦争も、どうすることもできない。
明白な悪でも受容以外選択のない状況の象徴としてのタバコなのか?
じゃあ、仕方ないですね。
そもそも創作に対する"要望"とは、例えば、この赤は刺激が強くて目に悪いので緑にしてくださいと、プロの画家にお願いすることなのか?
これ相当、勇気がいるでしょう。
二郎を悪く言ってしまいましたが、映画の中の二郎は知的で折り目正しく、気弱な外見や声と裏腹に意外と行動的ないい男です。
仕事(呼吸器内科医)を離れても、私は、タバコが嫌いです。
この映画、あえて言うならG指定(年齢制限なし)はまずいでしょう?
R20(20歳以上でないとダメ)ではどうですか?
現実には成人向けのR18はあっても、R20など存在しませんが、タバコだからやはりR20。
たまたま私の隣の席の小学校低学年女子は、映画に集中できなくてお母さんに叱られていました。
期待したようなアニメとちがったのでしょう。
大人にとっても二郎は難解です。
しかし、私はもう一遍見てみたい。
次回はタバコの件は事前に心の中で整理しておいて、還ってこないゼロ戦と、そして菜穂子と二郎のお話に心置きなく没入して、 アニメを見て泣いているみっともないオヤジになりたいです。
隣の女の子も将来大人になって見直すことがあれば、きっと大泣きして自分の成長を実感するはずなので、(タバコに目をつぶれば)、 今回の映画代は無駄ではなかったと思います。

(2013年9月 近畿中央胸部疾患センター 院長 林清二)