2014年3月このページを印刷する - 2014年3月

3月空模様

2月の末、霧が深いので電車の遅れが心配と、朝少し早めに家を出たら、実はPM2.5でした。
写真は3月1日の朝、自宅から南方向を見たものです。
いつもなら少々の雨でも生駒や金剛が遠くに見えるはずのところが、乳白色に一面霞んでしまっています。
PM2.5。
すっかり悪名高くなったので多くの方がご存じと思いますが、もともとは直径が2.5マイクロメーター(1マイクロメーターは1ミリの1000の1)以下の粒子状物質を指す専門用語で、そのサイズは砂粒より小さく、細菌よりは大きい。
何故"2.5"が問題になるのか。
大きなホコリは鼻や口で粘液に捉えられて痰や鼻水とともに体外に排出されます。
逆にあまりに小さければ肺の奥まで行っても、呼気と一緒に体外に出てしまいます。
肺の奥まで到達し、さらにそこに沈着するサイズが直径2から5マイクロメーターで、まさにPM2.5がこの大きさです。
私達の病院の重要な診療分野である職業性肺疾患(じん肺)でも、このサイズのほこりが問題となります。 PM2.5については燃焼によって排出された粒子、硫黄酸化物、窒素酸化物が粒子化したものなどが健康被害の原因になると言われているようです。
さらにPM2.5の一部は春先に飛来する黄砂由来のものもあるようですが、その有害性についてはまだ明確な結論はでていないようです。

以下、ウンチクです。
"アラビアのロレンス"という映画がありました。
CGのない時代によくこんな映画が、と思わせる大作です。
その中で、砂漠の何に魅かれるか?という質問に、ロレンス(ピーター・オトゥール)が「清潔さだ」と答えるシーンがありました、たしか。
彼が言う"清潔"には深い意味があるのでしょうが、それはともかく、あの厳しい環境では細菌が増殖するはずもなく、その答えには納得させられます。
中国大陸では、砂嵐に巻き上げられたタクラマカン砂漠やゴビ砂漠由来の"清潔な"黄砂が西風に乗って沿岸部を通る時に、いろいろな有機物が付着して抗原性を持つ粒子となり呼吸器疾患を引き起こすのでは、との説もあるらしい。
これもまたありそうな話です。

2月の末には大阪でPM2.5の日平均濃度が1立方メーターあたり60マイクログラムを超えました。
北京では、何とこの10倍濃度に達するとのこと。
成人の一回の呼吸の量は大体500ミリリットル(ペットボトル1本)ぐらいです。
一分間に15回呼吸すれば、1日14,000リッター(豪邸にある小ぶりのプライベートなプールぐらいの容量に相当。
そんなプールは写真でしか見たことはありませんが)の空気を吸い込むこととなります。
PM2.5の沈着率は50%前後との報告があり、半日外にいたとすれば約0.2ミリグラムのPM2.5が肺に沈着することになる。
少なそうに思えますが、これだけの量が集まれば当然目に見えるはずで、付着物によっては毒性を発揮するに十分な量かもしれません。
当院は多数の呼吸器疾患の患者さんを診察していますが、PM2.5が飛んだ日に、調子が悪くなった患者さんが外来に殺到するというような事態は、幸い今のところありません。
PM2.5 で本当に患者さんの調子が悪くなるのか慎重に見極めているところです。
日本ではこのような現状ですが、北京ではどうなのか、と呼吸器科医として心配になります。


(2014年3月 近畿中央胸部疾患センター 院長 林清二)