ANCA関連血管炎とは
血管そのものに炎症をきたす疾患である血管炎症候群の中で、抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:
ANCA)が病態に関与するものをANCA関連血管炎と呼びます。
ANCA関連血管炎は、さらに、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に分類されます。
症状
ANCA関連血管炎では、全身の血管炎に伴い、多彩な症状を引き起こします。
多くの患者さんで、発熱、全身倦怠感、食欲低下、体重減少といった全身症状が出現するほか、腎臓、肺、皮膚、神経などに局所症状が出現することもあります。
腎臓では、糸球体腎炎により、血尿やむくみが見られます。
肺では、間質性肺炎や肺胞出血により、咳、呼吸困難、血痰などがみられます。
皮膚病変としては、紫色のあざや皮膚の潰瘍などがみられます。
多発性単神経炎による手足のしびれや筋力低下が出現することがあります。
診断・治療
ANCA関連血管炎の確定診断は、①腎臓、肺などにおける臨床症状、②腎臓や肺、皮膚などの生検による病理組織所見、③血液検査におけるANCAの検出などをもとになされます。
肺の組織をとるためには、気管支鏡検査や病状によっては全身麻酔をかけて外科的に肺の組織をとる場合もあります。
治療には、全身ステロイドと免疫抑制剤が組み合わせて用いられます。
免疫抑制剤としては、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン、リツキシマブなどの薬剤が使用可能であり、患者さんの病気の状況や合併してお持ちの他の状況も踏まえて、患者さんごとに治療が調整されます。
重度の肺胞出血や間質性肺炎の増悪の際には低酸素血症をきたし、酸素投与が必要なことがあります。
肺とのかかわり
ANCA関連血管炎は、いずれも高頻度で肺病変をきたします。
顕微鏡的多発血管炎では間質性肺炎や肺胞出血を認めます。
間質性肺炎が先行することがあり、その場合には徐々に呼吸困難が進行する場合もあります。
多発血管炎性肉芽腫症では、肺胞出血を認めるほか、胸部X線検査や胸部CTにおいて多発結節影を呈することがあります。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患が先行するため、難治性喘息として加療されている中に本疾患がまぎれている可能性があり、注意が必要です。