進行性肺線維症(PPF、ピーピーエフ)、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD、ピーエフアイエルデイ)
【間質性肺炎、肺線維症にはいろいろ病気があるようですが、進行性線維化を伴う間質性肺疾患、進行性肺線維症との関係はどうなっているのですか?】
間質性肺炎や肺線維症と呼ばれる疾患は一般的に間質性肺疾患(かんしつせいはいしっかん)とよばれます。
間質性肺疾患には200以上の病気が含まれます。これらの間質性肺疾患の経過は、様々で、良くなる病気もあれば、徐々に悪化する病気まで、また治療法も多様です。
昔から、これらの疾患の中には、病名や標準的な治療にもかかわらず肺が徐々に固くなり(肺の線維化)、呼吸機能が低下、身体状態や生活の質が低下する場合がある事が知られていました。
最近、異なる間質性肺疾患ではあるけれど、徐々に肺がかたくなる状態がみられる状態を、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD、ピーエフアイエルデイ)と呼ぶ事が提唱され、抗線維化剤を用いた国際共同治験が行われました。
更に他の抗線維化剤でも、様々な名称と基準を用いて、類似の状態を定義して治療研究が行われました。
2022年、国際ガイドラインが発表され、進行性肺線維症(PPF、ピーピーエフ)と言う概念が国際的に提唱されました。
以下代表的な、進行性線維化を伴う間質性肺疾患と進行性肺線維症について説明します(図1)。
図1 間質性肺疾患と進行性線維化を伴う間質性肺疾患。進行性線維化を伴う間質性肺疾患を認める事の多い疾患を枠線の太さ(頻度)で示します。進行性肺線維症は類似の概念ですが、定義上特発性肺線維症を含みません。IPAFは研究用カテゴリ分類名で診断名ではありません。
【進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD、ピーエフアイエルデイ)について教えてください】
現時点で、進行性線維化を伴う間質性肺疾患について一定の定義はありませんが、すでに発表され、特発性肺線維症以外の間質性肺疾患の患者様を対象とし、抗線維化剤を用いた治験では、適切な病気の管理を行ったにもかかわらず、24ヶ月の間に努力肺活量(FVC)の低下、HRCTなどの画像による進行性の肺の線維化の悪化、咳や呼吸困難などの呼吸器症状の悪化の組合せによって定義された基準が用いられました。この基準に従うと特発性肺線維症以外の間質性肺疾患は、特発性肺線維症と同じように肺機能が悪化し、抗線維化剤が有効である事が明らかにされました。
【進行性肺線維症(PPF、ピーピーエフ)について教えてください】
2022年、特発性肺線維症と進行性肺線維症に関する国際ガイドラインが発表され、進行性肺線維症の定義が提唱されました。ガイドラインでは進行性肺線維症は、特発性肺線維症を含まない事が明記されました。また、過去1年以内に、努力肺活量(FVC)に加え肺拡散能(DLco)の低下、詳細な画像所見での進行の所見、呼吸器症状の悪化を組み合わせた定義となりました。
進行性線維化を伴う間質性肺疾患および進行性肺線維症は類似の概念ですが、定義を巡って今後も議論が続くと思われます。
【どのような検査が行われるのですか?】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患および進行性肺線維症も、それぞれの病気の診断に加えて、肺機能(努力肺活量、肺拡散能)、胸部HRCT、症状の悪化で肺の線維化が進行している評価を行います。
【どのように治療され経過をたどるのでしょうか?】
特発性肺線維症に準じて徐々に肺が固くなると考えられますが、基本的に、各疾患の診断とその標準的な管理(過敏性肺炎なら抗原回避、薬剤性肺障害なら被疑薬中止等、他項目説明参照)と治療(ステロイド、免疫抑制剤等)を行う事が必要です。それでも線維化が進行する場合、保険で承認されている抗線維化剤の投与が行われます。抗線維化剤投与開始の時期については議論が続けられています。
尚、安定していても、急性増悪(きゅうせいぞうあく)と言って、一ヶ月くらいの経過で急に悪くなることがあります。また肺癌や感染症、肺高血圧、胃食道逆流症を合併する事もあります。
特に膠原病に伴う間質性肺疾患の場合、呼吸器系だけでなく全身の管理も必要となり、使用する薬剤多くなり副作用の対策も必要です。
血液の酸素が低下し呼吸困難が強い場合は、酸素投与(長期酸素療法、在宅酸素療法)、呼吸リハビリテーションが行われます。禁煙、感染予防(ワクチン接種、手洗い、うがい)は一般論として必要です。
適応あれば肺移植の対象となります。
尚、最近、様々な新薬の開発(治験、チケン)が行われています。治験は標準的な治療を受けながら参加することが可能である場合も多くなっています。
【その他】
間質性肺疾患のなかには、厚生労働省の難病医療費助成制度で指定難病に指定されている疾患も少なくありません。
一定の基準を満たし、申請が認定されれば、指定医療機関で医療費の補助をうける事が可能です。また、呼吸機能の障害が一定基準を満たす場合、身体障害者手帳制度、重度障害者医療費助成制度に基づき医療費の助成をうける事が可能です。
詳しくは医療ソーシャルワーカー、主治医にお尋ねください。