気管支喘息

気管支喘息とは

気管支喘息は、気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動を持った気道狭窄や咳で特徴づけられる疾患と定義されます。といっても難しいと思いますので、まず炎症とは?というところから説明します。
炎症は発赤(赤くなる)・熱感(熱をもつ・発熱する)・腫脹(腫れる)、疼痛(痛み)の4つの所見が特徴的な状態です。
分かりやすいのは捻挫などで関節炎を起こした場合です。
捻挫した足首を想像してみると、その関節は赤く腫れて、痛みもあり触ると熱いという光景がすぐに思い浮かびます。
また虫刺されも炎症です。
赤く腫れて熱感がある。
気管支喘息の場合には、痛みこそありませんが、気道粘膜が、赤くなって腫れている状態と考えると分かりやすいと思います。
炎症により粘膜が腫れ、また気管支周囲の平滑筋が収縮することで空気の通り道が狭くなり(図1)ゼイゼイ、ヒューヒューといった呼吸音が聞こえるようになります。
時に、息苦しいのに静かで異常な呼吸音が聞こえない場合があり、これは大変危険な状況です。
空気の通り道が細すぎて音がしないというような場合には、気管支拡張薬を使用すると、かえってヒューヒューが大きく聞こえるようになります。
狭くなりすぎると窒息することもあります。
喘息によって死亡する人は、減少傾向ですが、厚生労働省人口動態統計によると、2013年は年間1728人。
減少してきた背景としては吸入ステロイドの普及があります。
十分な治療をすることが重要です。


主な症状

咳・喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューといった呼吸音)・痰・呼吸困難


気管支喘息の病型

気管支喘息にはアトピー型と非アトピー型があります。アトピー型では環境アレルゲンに対するIgE抗体が認められます1。
アトピー型、つまりアレルギータイプでは、原因は各種環境の特異的なアレルギーが悪化の原因となります。ハウスダストやダニのアレルギーを認めることが多いですが、他に犬や猫、ウサギなど動物アレルギーで悪化することもあります。各アレルギーは血液検査で調べることが出来ます。
非アトピー型はアレルギーの原因が明らかでないタイプとなります。

 

その他の病型

アスピリン喘息
 アスピリン喘息は、アスピリン服用によって生じる喘息ではなく、他の解熱鎮痛剤でも発症します。アスピリンなどの解熱鎮痛剤により強い気道症状(鼻閉、鼻汁、喘息発作)を呈することからこの名称が広まりました2。喘息発作が悪化したときに、解熱鎮痛剤を飲んでいなかった、湿布薬を使わなかったかなどは診断に重要な情報です。
 他にアスピリン喘息の人が注意すべき薬剤としてステロイドがあります。これは喘息治療としても使われますが、ステロイド製剤に含まれるコハク酸エステルに対する過敏性反応が問題となることもあります。アスピリン喘息患者さんの場合にはコハク酸エステルを含まない製剤を投与する必要があります。他に、パラベンなどの添加物の入った化粧品や医薬品、食品添加物の合成着色料の食用黄色4号も発作の誘因となり得ます。気管支喘息発作がどういったときに起こったか振り返って原因を追究することが、次の発作予防につながります。

運動誘発喘息
 運動誘発喘息は運動数分後に喘息発作や気管支攣縮が生じる病態です。成人喘息の約半数で運動時の症状悪化を自覚しています。一方喘息を有さない健常人でも運動後に一過性の気管支収縮を来すことがあり これらの病態の診断・管理に関して2013年に米国胸部学会から運動誘発気管支収縮(exercise-induced bronchoconstriction.EIB)としてガイドラインが提示されました。

咳喘息(cough variant asthma)
 咳喘息は喘息の一型で、痰のからまない咳嗽を唯一の症状とし、喘鳴や呼吸困難を伴わないことが特徴です。気管支拡張薬が有効です。診断がつかず長期継続することが多いため慢性咳嗽の原因となっていることも多いです。

 

気管支喘息の診断

問診
小児喘息の既往があるか?家族に喘息の人がいるか?
症状が出やすいのは朝方や夜中か?(1日の中でも症状のムラがある:日内変動がある)
アレルギーがあるか?
これらの質問全てがYesの場合で、喘鳴があれば気管支喘息を疑います。

肺機能検査
肺機能検査といって、『息を吸って吸って、吐いて~』と掛け声をかけられ行う検査があります。これが気管支喘息の診断に重要です。
しんどいとおっしゃる方も多いですが、この検査で息が吐きにくそうなことを確認し気管支拡張薬を吸入して改善する場合には、気管支喘息と考えられます。
但し、繰り返し発作を起こしていて、気管支粘膜が分厚くなってしまっているような人では、気管支拡張薬を吸入しても十分改善しません。
つまり、この検査だけでは診断つかないことがあります。
他に、呼気NO検査という検査も有用です。気道粘膜のアレルギー性の炎症があるかどうかが分かります。
10秒ほどゆっくり息を吐いて調べる検査で、安全で負担の少ない検査です。

ピークフロー
ピークフローとは、力いっぱい息をはき出したときの息の速さ(速度)の最大値のことで、この値を記録し1日の中での変化が明らかであれば(朝が低く夕が高い)喘息を疑いますし、日々の変化を知ることで治療効果を評価することも可能です。
気管支喘息と言っても症状は個々に異なりますし、診断も難しいです。
ゼイゼイいっているから喘息と診断することは出来ません。
心不全でも同様の症状が起こり、心臓喘息などとも呼ばれます。
気管支結核と言って空気の通り道である気管支に結核感染を起こして気管支が狭くなるとゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸音が聞こえることがあります。
早期診断をして、早期治療を行い、健康な人と変わらない生活が出来ることが気管支喘息の治療目標です。
まずは、咳が続く、呼吸がゼイセイいうなどの症状があれば検査をしてみてください。

 

気管支喘息の治療

気管支喘息の治療には発作時の治療と、安定している時の治療があります。
発作時だけの治療をしている人もいますが、発作が起こらずに健常な方と同じように生活するためには、長期管理薬というメンテナンスの役割をするお薬を継続することが重要です。

発作時:重積発作では命にかかわることもあります。早急に対応し、改善無ければ病院受診するようにしましょう。

1)短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA):
SABAは発作治療の第一選択薬です。1-2吸入/回を20分毎に吸入します。これを繰り返しても発作が治まらない時は病院受診をお勧めします。発作の原因が気管支炎や肺炎などの場合、感染治療をしないと改善しません。

2)副腎ステロイド
SABAを吸入しても反応が乏しい場合には、全身性ステロイド投与を行う。

3)0.1%アドレナリン皮下注射: アドレナリンの皮下注射は、β作用による気管支平滑筋弛緩とα作用による気道粘膜浮腫の除去による気管支拡張作用を示すことから喘息の重篤な発作時に使われることがあります。が、近年日常的な喘息コントロールが改善され、使用頻度は少ない。

長期管理薬:症状がなくても症状のない状態を維持する為に治療が必要です。日常的にメンテナンスをしておくことで、感染時の増悪を防いだり、重篤な発作を防ぐことが可能です。

1)吸入ステロイド(ICS)  
 気管支喘息治療の基本となる薬剤です。軽症な方から重症な方まですべての人で使用される第一選択薬です。症状に合わせて使用量が低用量~高用量まで調整できます。
 全身性の副作用は少ない。口腔・咽頭カンジダ症や嗄声はよくみられるため、吸入後のうがいを必ず行いましょう。 

2) 長時間作用性β2刺激薬(LABA) 
 強力な気管支拡張薬です。
 喘息の気道炎症に対しては効果を認めないため、LABA単独使用は認められません。
 ICSと併用します。
 副作用として振戦、動悸、頻脈などがみられます。

3)ICS/LABA配合剤  
 配合剤はICS、LABAを個々に使用するよりも有効性が高いと報告されています。
 配合剤の利点は、吸入器を1つにすることで吸い忘れを防ぐことが出来ることです。また、2種類の薬剤を1日1回吸入するだけで良いという薬剤もあり、吸入回数が減ることで、治療実施率が上がり治療効果が期待されます。  

4) ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
 ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は気管支拡張作用と抗炎症作用を有する薬剤で、プランルカスト水和物とモンテルカストナトリウムの2種類があります。
 ICSの併用薬として有用であり、ICS吸入量の減量にも有用です。

5)抗IgE抗体
 IgEに対するヒト化モノクローナル抗体、オマリズマブ(商品名:ゾレア®)は、吸入ステロイドを含む十分な治療を行っても喘息コントロールが悪い場合に使用検討する薬剤です。
 アトピー型の喘息に有用であり、治療前の血中IgEが30-1500IU/mLの患者が対象となります。
 高価な薬品で、投与量・投与間隔は、体重とIgE値で決定しますので、投与量により費用は下記のような計算になります。
例)体重60kgでIgEが1000IU/mlであった場合には2週間隔で600mg投与。つまり1200mg/月となり、薬剤は(45578円/150mg×4)×2/月=364624円。高額医療申請なども検討されます。(実際に支払う費用は個々の負担割合を掛け算してください。1割負担の人なら約3万6千円/月)

6)長時間作用性抗コリン薬  
 喘息に対する長期管理薬としてチオトロピウムのソフトミストインヘラー(スピリーバレスピマット®)のみが承認されています。この薬剤は既に慢性閉塞性肺疾患・COPDに対する薬剤として広く使用されているお薬です。
 ICS・LABA投与しても症状残存する場合に追加投与して上乗せ効果が期待されます。