気管支鏡治療

気管支鏡治療とは

・検査・治療の内容は表2の通りである.
・多くはTBBやTBLBなどの検査が目的の場合が多いが,気管支充填術や難治性喘息へのサーモプラスティの様に治療目的の使用も増加している.
表2. 気管支鏡の目的・検査内容


・検査を受けるに当たり表4の項目を最低限確認する.
表4. 検査前に確認する項目

・抗凝固薬の中止について
薬剤中止の際には必ず処方医に休薬可能か確認し,必要であればヘパリン置換を行う.
一時的に休薬する事で血栓塞栓症の合併率が0.008%で起こるので1),休薬に伴うリスクを必ず患者に説明する.


・検査を受ける前の全身評価と疑われる疾患に対する精査を行う.
・気管支鏡前に行う事が望ましい検査について表5に示す.
表5. 気管支鏡検査前の検査項目

 


・肺結核が疑わしい場合
結核の場合,気管支鏡検査を行う事で医療者への感染を引き起こす場合もあり,気管支鏡検査の適応について画像・喀痰(可能であれば3回,場合によっては胃液検査)・IGRA等の結果を踏まえ総合的に判断する.
肺結核が疑われ気管支鏡検査を行う場合はN95マスクなどの感染予防の対策を行う.


・検査全体の流れとして1泊2日の場合は下記の通りである.
1. 検査前3時間から絶飲食
2. 検査15分前に前処置(筋肉注射・咽頭麻酔).
3. 気管支鏡検査
4. 検査1時間後にレントゲンを確認
5. 検査2時間後に飲水試験を行い問題なければ絶飲食解除
6. 翌日レントゲンを確認し退院


・検査
1)気管支肺胞洗浄(BAL)
・臥位で検査を受けるため腹側の枝の方が洗浄液の回収率がよい.そのため中葉舌区(B4・B5)で行う場合が殆どである.
・CT上で中葉・舌区に陰影がない場合に,体位を変更して気管支肺胞洗浄を行う場合もあるが,回収率は悪い.
・注射用シリンジから無菌生理食塩水を50mlずつを3回(合計150ml)行い,回収した洗浄液は滅菌ガーゼを通して無菌カップに入れる.
・アスベスト小体の定量を行う際は滅菌ガーゼを使用せずに無菌カップに入れる.
2)経気管支肺生検(TBLB)
・透視下に胸膜直下を生検する.この際細気管支から肺胞領域の肺組織を採取するため,胸膜直下と鉗子との距離を確認しやすいB3a,B2b,B8a,B9aから行う事が多い.
3)経気管支生検(TBB)
・病変を直接鉗子にて生検を行うこと.腫瘍性病変の精査で行う事が多く,事前に病変に到達できる枝を確認し,生検時には鉗子をしっかり押し当て十分な組織量を採取する必要がある.
4)ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)
・先端に超音波の付いたプローブを用いて,病変に到達しているかリアルタイムで確認できる.その後プローブのみを残してガイドシースから何度も鉗子やブラシを挿入する事で同一部位から何度も生検・擦過が可能となる.


・合併症と対策4)
頻度としては少ないが,いつでも対応できるよう心がけておく.
1)出血(0.02%~0.85%)
多くの場合気管支鏡のウェッジにて止血可能である.ウェッジでも止血困難な場合は,1000倍希釈したボスミンを3-5mlずつ散布,またはトロンビンを使用して止血を図る.場合によっては,酸素投与を行いつつ,ルートキープを行いカルバゾクロム・トラネキサム酸を混注した細胞外液の点滴を行う.また,患側が下側になるよう体位変換を行い,健側への出血のたれ込みを防ぐ.
それでも改善しない場合は健側への片肺挿管での気道確保も考慮する.
一度,気管支鏡を引き抜いてしまうと出血で視野の確保が困難なため,出血部位への再挿入は困難を極めるので,出血が疑わしい場合はゆっくりと引き抜きつつ止血を確認するのが望ましい.場合によっては透視にて気管支鏡の位置を確認しながら慎重に引き抜いてくる.
2)気胸(0~0.67%)
末梢病変の生検を行った際は終了時に全例透視での肺虚脱の有無を確認する.透視は臥位での確認となるため,
一般的な立位での気胸と異なり肺尖部に空気の貯留を認めない場合もあり,肺の外側も含め肺虚脱がないかしっかり確認する必要がある.
気胸は検査後0.5~1時間後,中には翌日に出現する場合もあり,患者説明(特に外来検査時)をしっかり行う必要がある.
3)リドカイン中毒(0~0.07%)
初期には舌・口のしびれから始まり,目眩・耳鳴り・興奮などの症状が生じその後,中枢神経症状(痙攣・意識消失)や呼吸停止が起こる.
対策はリドカインを過度に使用しないと言うことに尽きる.使用量としては成人で8.2mg/kg(60kgの成人で2%リドカイン25ml相当)以下に抑えるのが望ましいとされる5).
4)発熱・感染症(0.05~0.19%)
しばしば気管支鏡検査後に発熱を来す場合がある.一過性の場合が多く,予防的な抗生剤投与は推奨されない5)