検査の内容と目的
嚥下造影検査とは、飲み込みの過程や状態を正確に評価するための検査です。
摂食・嚥下障害(食べ物がうまく飲み込めず、誤って気管に入ってしまうこと。「誤嚥」ともいう)の疑われる患者さんに行い、のどの形や、飲み込み方に問題が無いかどうかを調べるのがこの検査の目的です。またこの検査により、確実に飲み込むことができる体位や、患者さんに適した食物の状態(「とろみ」をつけた方が良い、ゼリー状のものが良いなど)を検討します。
摂食・嚥下障害の疑われる患者さんは、誤嚥により肺炎を繰り返し発症することがあり(誤嚥性肺炎)、健常者と比べ、肺炎により死亡するリスクが増加します。誤嚥を診断して予防する方法を探すことが必要です。
嚥下造営検査の結果により経口摂取が可能かどうか判断できます。さらに、誤嚥を予防する体位や食事方法を検討することで誤嚥性肺炎を予防することにつながります。むせないように確実に食べ物を飲み込むことは、肺炎防止のために大変重要なことです。
検査の方法
①検査のためにティッシュとスプーン、タオルまたはエプロンを用意して下さい。検査前は軽く食事をとることができます
②検査は放射線科のX線造影室という部屋で行います。撮影部位は口から喉、食道までです。
③こちらから提供する模擬食品(食べ物、飲み物)を指示に従って飲食して下さい。
④食品にはヨード造影剤が含まれ、通過する様子をレントゲンで確認します。
検査に伴う危険性とその発生率
1)誤嚥性肺炎
この検査は誤嚥があるかどうかを調べる検査ですが、誤嚥がある場合には、続いて肺炎になり、呼吸困難、発熱、咳、痰、胸痛などを生じる事があります。なお当院ではこの検査によって2007年4月-2013年6月まで、肺炎の発症はありませんでした。
2)造影剤アレルギー
ヨード造影剤のアレルギー反応(患者さんの体質によって、薬が体に合わないで、過敏な反応が起こること)により、嘔気、嘔吐、掻よう感(かゆみ)、蕁麻疹(じんましん)、熱感、発熱、喘息発作など軽度の副作用が0.1-5%に起こるといわれています。頻度はまれですが、アナフィラキシーショック(アレルギー反応によって血圧が下がったり意識がうすれたりすること)、けいれんなど重症の副作用がおこることがあります。適切な治療を行っても死に至ることがあります。
3)放射線被曝
嚥下造影時の放射線被曝量はおよそ15mGyです。この量で放射線障害(皮膚障害、白血病など血液の病気、倦怠感、発癌等)が起こる可能性はきわめて低いです。あなたにとってはこれらの危険性よりこの検査によって得られる利点が大きいと考えられます。
4)消化器系
ヨード造影剤の刺激により、下痢、腹痛、腹部不快感などが起きることがあります。
5)その他
上記に引き続いて循環器系合併症(心筋梗塞、脳梗塞)など、予期せぬ合併症が起こる危険性があります
偶発症
1)誤嚥性肺炎
造影剤は非イオン性造影剤を使用します。保険適応外の薬品ですが、造影剤のバリウムと比較して気管や肺に入っても刺激性が少ないことからこの薬を使用しています。誤嚥をした場合、排痰を促し、口腔や気管の吸引をし、必要に応じて酸素投与を行います。適切な処置を行っても肺炎、肺水腫などを発症することがあり、抗生剤やステロイド剤などを使用して治療します。まれに肺炎が悪化して、気管挿管、気管支鏡による吸痰や、人工呼吸、気管切開などの処置を行う場合があります。
2)造影剤アレルギー
あらかじめ問診表で造影剤等のアレルギーの可能性の可能性について評価します。造影剤アレルギーが起こった場合には直ちに検査を中止します。またステロイド等の薬剤投与あるいは全身管理を行うことがあります。
3)消化器系の副作用
下痢、腹痛、腹部不快感などが起こった場合には症状に応じて内服薬などを処方します。
4)その他
循環器系合併症(脳梗塞、心筋梗塞)など、何らかの予期せぬ合併症が起こった場合には、全力で最善の対応をします。
代替可能な検査
飲み込み方を評価する検査には嚥下造影検査のほかに嚥下内視鏡検査(鼻から細い胃カメラのような器具を入れてのどを観察すること)があります。嚥下内視鏡は嚥下造影と比較すると、放射線を浴びなくてすみ、造影剤を使わないので造影剤(ヨード)アレルギーの可能性はありません。
しかし、嚥下内視鏡検査は咽頭反射の強い場合には吐き気によって充分な検査が行えないこと、嚥下運動の最中には観察ができないこと、局所麻酔薬(キシロカイン)アレルギーの可能性、内視鏡挿入による鼻出血の可能性があるなどの違いがあります。誤嚥や誤嚥性肺炎の可能性は嚥下造影検査と同様です。
患者の自己決定権
*いったん同意書を提出しても、検査が開始されるまでは、本検査を受けることを取りやめることが出来ます。
*この検査の実施については、あなたに自己決定権があります。
*予定される検査を拒否した場合にも、今後の医療行為に関して不利益を受けることはありません。
セカンドオピニオンと質問の自由
他の医療機関でセカンドオピニオンを希望される場合は、必要な診療情報を速やかに提供いたします。内容に関してわからないこと,質問のある場合には担当医に自由に質問することができます