肺炎

肺炎とは

 肺炎とは、細菌やウイルスの感染により肺におきる急性の炎症のことです。「肺炎」という名がつく病気には例えば他に間質性肺炎、薬剤性肺炎などがありますが、これらは感染症ではありませんので全く別の病気です。また肺結核も感染症ですが発病までに数ヶ月を要することが多く急性ではないので通常は肺炎には含まれません。なお、かぜはウイルスにより引き起こされた上気道(鼻やのど)の炎症を指します。かぜと肺炎は別の病気ですが、上気道の炎症により細菌が肺に入りやすくなるので、かぜが肺炎の引き金になることがよくあります。

日本における頻度

 2021年における日本での死因順位をみると、1位が悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が老衰、4位が脳血管疾患、5位が肺炎、6位が誤嚥性肺炎となっています。肺炎と誤嚥性肺炎を併せて集計すると肺炎は3位となります。誤嚥とは、食べ物や水分が誤って気管に入ってしまうことです。高齢者では誤嚥しやすくなっており、肺炎にかかりやすくなります。現在日本でおこる肺炎の大部分は高齢者であり、その多くに誤嚥が関与していると考えられています。

 

肺炎の分類

 基礎疾患がないか、軽微な基礎疾患を有する人が一般社会の中で生じる肺炎を市中肺炎(CAP)といいます。一方、病院に入院している人に生じる肺炎を院内肺炎(HAP)、老人ホームなど施設に入所している人に生じる肺炎を医療・介護関連肺炎(NHCAP)といいます。原因となる微生物としてはいずれももっとも多いのは肺炎球菌ですが、その他としてはCAPではマイコプラズマやインフルエンザ菌、HAPやNHCAPでは黄色ブドウ球菌や緑膿菌が多くなります。

 

肺炎の症状

 肺炎の症状には、発熱、せき、たん、呼吸困難、胸痛などがあります。
 ただし、高齢者の場合は、時に肺の症状があまりなく食欲低下や意欲の低下などが主な症状のことがあり、肺炎を疑いにくいことがあるので注意が必要です。

 

肺炎の診断

 肺に炎症が生じると、レントゲンで陰影が映りますので、胸部レントゲン検査がまず必要な検査になります。場合によっては他の病気との鑑別のため胸部CT検査を行うこともあります。肺炎が疑われれば、かくたん検査を行って原因となる菌を調べる検査や、血液検査で白血球数や炎症反応を調べる検査を行います。まん延状況によっては、鼻の奥をこすってインフルエンザや新型コロナウイルスの検査を行うこともあります。

 

肺炎の治療

 肺炎は感染症ですから、原因となっている微生物を殺す治療がまず必要になります。細菌を殺す薬が抗菌薬、ウイルスを殺す薬が抗ウイルス薬です。かくたん検査で原因となる菌をはっきりさせるのが基本ですが、菌を見つけられないことがむしろ多く、その時にはいろいろな状況から原因となる菌を推定して適切な抗菌薬を選択します。現在では内服薬でも優れた抗菌薬があり外来治療も可能ですが、症状が高度であったり陰影が広範囲で酸素吸入が必要であったりする時などは入院のうえで点滴による抗菌薬投与が必要になります。
 あわせて、全身状態を改善させる治療も必要になります。血中の酸素濃度が低下している時は鼻から酸素を吸入することが必要となります。誤嚥が原因となっている場合は一時的に食事をストップして点滴で水分や栄養を補給せざるを得ない場合もあります。肺の中に貯まったかくたんを外に出すために胸を叩いたり絞り出したりするリハビリを行うこともあります。誤嚥を改善させるために言語聴覚士による嚥下訓練を行うこともあります。


肺炎の予防

1)肺炎球菌ワクチン

 肺炎球菌は肺炎の原因としてもっとも多く、また重症になりやすい菌です。65歳以上になれば肺炎球菌ワクチンを接種するようにしましょう。一回接種すれば5年間有効です。

2)かぜの予防

 かぜを引くと上気道の炎症により肺炎にかかりやすくなります。特に冬になれば、手洗いやうがいを励行し、少しでもかぜを引かないようにしましょう。またインフルエンザワクチンを毎年接種しておくことも重要です。

3)禁煙

 タバコの煙により肺の気管支の細胞が傷つき、細菌やウイルスが入り込みやすくなるため、肺炎のリスクが高くなります。また喫煙により慢性閉塞性肺疾患(COPD)となると肺の働きも弱くなり、肺炎になったときに重症となりやすくなります。禁煙は重要な肺炎の予防策です。