気管支鏡検査

検査の内容と目的

気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)を口または鼻から喉を通して、気管や気管支の中に挿入し、内腔を観察や、気管支や肺の組織や細胞、分泌物などの検体の採取を行います。この検査は、各種胸部疾患の正確な診断・病態解明・治療方針の決定を行うことを目的としています。
以下のような症状、所見があった場合に医師から気管支鏡検査を勧められます。
  ①単に血液が混じった場合
  ②原因不明の咳が続く場合
  ③胸部レントゲン写真やCT写真で肺に異常陰影がみられ肺炎や炎症、感染症が
   疑われる場合

  ④喀痰検査で 癌細胞を疑う所見がみられる場合
  ⑤その他、肺、気管支に異常がみられる場合

(気管支鏡について)
気管支鏡は直径5~6mmの細くて柔らかい管で、胸の奥にある肺につながる気管支の中をのぞき見る器械です。胃カメラと同じ構造ですが、胃カメラより大変細かくできています。
また、肺や気管支など呼吸器の病気にかかった患者さんにとって重要な器械で気管支内を観察するとともに、組織や細胞を採取することで正確な診断(気管支鏡検査)を行うだけでなく、気管支が狭くなる病気の治療(気管支鏡下治療)にも用いられています。

 

検査の方法

①のどの麻酔を行います。口を開けて、息を吸ったり吐いたりしてもらいます。息を吸うのにあわせて、のどの奥にスプレーで麻酔の薬を噴霧します。

②検査台に移り、仰向けに寝ていただきます。さらに、酸素濃度モニターを装着し、検査前に血圧測定を行います。この時、状態に合わせて心電図モニターを装着する場合があります。

③検査中、気管支鏡をかまないようにマウスピースを軽くくわえてもらいます。また、検査中に咳がでないように、気管支の中にも麻酔の薬を使用しますが、目に薬液が入らないようにするために、目を覆い隠します。

④気管支鏡を口からゆっくり挿入していき、途中で咳が出る場合は適宜麻酔の薬を追加していきます。検査中は肩の力を抜いて、ゆっくり呼吸をするよう心がけて下さい。また、気管支鏡が喉を通過した後は声が出ません。以上があれば合図(ブザーを鳴らすなど)で知らせて下さい。

⑤気管支鏡が気管支内に到達したら、目的の検査を行います。肺の組織を採取するときは、息止めをしていただくことがあります。合図に合わせて息止めをお願いします。合併症予防のために、組織採取時に痛みの有無を聞きます。痛みがあれば、あらかじめ医師からいわれた合図(胸をたたくなど)をしてください。

⑥出血などの偶発症が起きていないことを確認してから、気管支鏡を抜き取り検査終了です。

*検査時間は20~30分程度ですが、検査内容、処置内容によってはさらに時間を要する場合があります。
*検査終了後は異常がないか確認するため、胸部レントゲン写真を撮影します。

 

検査後の注意

・検査前約3時間、および検査後約2時間は絶飲食となります。検査後は医療スタッフ付添のもと、飲水試験を行います。
・検査前には、筋肉注射(鎮静と気道の分泌を抑えるため)、スプレーを用いた喉への局所麻酔(嚥下反射・咳嗽反射を抑えるため)を行います。患者さまの要望に応じて静脈麻酔を実施していますが、検査内容などによっては適さない場合がありますので、主治医にお尋ねください。
・普段内服している薬の種類によっては一定期間中止していただきます(血液をサラサラにする薬:バッファリンやバイアスピンなど)これは出血を軽減するためです。
・緑内障や前立腺肥大症、気管支喘息および心臓病の既住のある方は必ずお知らせください。

偶発症

・麻酔薬によるアレルギーや中毒(合併症発生率0.03~0.04%)
リドカインという局所麻酔薬に対するアレルギー反応を起こす場合が稀にあります。その際は検査を中止し必要な薬物投与を行います。中毒症状としては、不安・興奮、ふらつき、血圧低下、不整脈、けいれんなどがありますが、時間が経過すれば体内で解毒されますのでさほど心配はありません。

・肺・気管支からの出血(合併症発生率0.02~0.14%)
細胞や組織を採取する際には微量なものを含めれば必ず出血を伴います。通常は少量の出欠ですぐに止血しますが、稀に出血量が多くなることがあります。処置には、止血剤の注入や気管支内に風船を入れて止血する場合があります。きわめて稀ですが、救急救命的に気管内にチューブを入れる処置が必要になった事例や死亡例の報告もあります。

・気胸(合併症発生率0.004~0.87%)
組織をつまみ取る際に肺を包む胸膜という薄い膜を傷つけることがあります。そこから空気が漏れると「気胸」を起こして肺が縮むことがあります。通常は程度が軽いことが多く、2~3日の安静のみで軽快します。肺気腫などを合併している場合には、空気の漏れが多くなり皮膚から胸に管を入れて空気を抜き取る処置(胸腔ドレナージ)が必要になることがあります。

・その他
検査後に発熱や肺炎を起こすことがありますが(合併症発生率0.15~0.25%)ほとんどが一時的なものです。稀ですが、喘息(合併症発生率0.02~0.09%)、呼吸不全(合併症発生率0.02~0.36%)、心筋梗塞・不整脈などの心血管系の障害(合併症発生率0.08%)、気管支閉塞(合併症発生率0.07%)、気管支穿孔(合併症発生率頻度不明)などの報告があります。またごく稀にここに記載のない合併所や、予期しない偶発症が発生した例や、死亡例(合併症発生率0.0004%)があります。

患者の自己決定権

*この検査の実施については、あなたに自己決定権があります。
*予定される検査を拒否した場合にも、今後の医療行為に関して不利益を受けることはありません。

セカンドオピニオンと質問の自由

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