リンパ脈管筋肉腫症(LAM)

リンパ脈管筋肉腫症(LAM:ラムと略して呼びます)とは?

・リンパ脈管筋腫症(以下、LAM)は妊娠可能な年齢の女性に起こることが多く、進行性の病気です。
・稀な病気で日本人での有病率は100万人あたり約1.9~4.5人と推測されており、厚生労働省の難病に指定されています。
・体の中でTSC1、TSC2という遺伝子の異常が起こり、LAM細胞という異常な平滑筋のような細胞が出現し、肺・リンパ節・腎臓などで増えることで、体の臓器を障害します。
・基本的に全身性の疾患ですが、特に、肺では、LAM細胞が増殖して、肺の構造を壊すことで、肺にのう胞と言う小さな穴が多発し、呼吸する力が落ちてきます。
・LAMは、結節性硬化症(TSC)という遺伝性の病気に合併する場合と、合併しない孤発性LAMの2種類に分類されます。

 

症状

・呼吸困難、咳、血痰、気胸(肺に穴があいて、しぼんでしまうこと)、乳糜胸水(脂肪分の多い水が胸の中にたまること)、腎臓や肝臓に血管筋脂肪腫という良性の腫瘍、リンパ管に沿ってリンパ脈管筋腫という腫瘍、足のむくみ(リンパ浮腫)などが起こります。

・妊娠、出産、不妊治療や更年期障害治療におけるエストロゲン製剤の使用は、LAMの病状を悪化させる可能性があります。診断後の生活設計や治療については、主治医の先生を含めて、よくご検討いただく必要があります。

 

検査

・高分解能CT(HRCT)で肺を撮影すると、小さなのう胞(穴)が多数認められます。肺にのう胞ができる病気は他にも多数あり、診断が難しいこともあります。

・気管支鏡検査などで、体の組織や細胞をとってきて、その中にLAM細胞があるかを確認することで、病理的に診断が確定されます。非喫煙者、TSCを合併など、一定の条件を満たして典型的な場合は細胞や組織がなくても臨床的な診断が可能とされていますが、他の疾患である可能性は必ずしも否定できません(診断の確実性は低くなります)。

・リンパ脈管筋腫症の患者さんでは、VEGF-Dという血液検査の数値が高いということが分かっており、診断に有用とされています。(ただし、わが国では、2022年10月現在、保険診療では測定できません。当院を含めた一部の研究室で測定可能です。)

 

治療

薬物治療

・当院は、アメリカ、カナダのLAMの専門家とともにシロリムスというリンパ脈管筋腫症に対する薬の研究、国内承認に中心的に関わり、現在、LAMの治療薬として保険を用いて、シロリムス(ラパリムス)が使用できるようになりました。

・シロリムスはLAM細胞の増殖を抑える作用があり、肺機能が低下を抑える効果がありますが、中止すると再度悪化し、この病気を完全に治す薬剤ではありません。

・患者さんの呼吸する力が落ちてきている場合に、シロリムスを用いた治療を行ないます。シロリムスは1日1回1~2mgで経口内服し、血中濃度を測定しながら適宜増減します(1日4mgまで)。

・代表的な副作用には以下のようなものが報告されています。口内炎(88.9%)、鼻咽頭炎(49.2%)、上気道炎症(46.0%)、発疹(41.3%)、下痢(39.7%)、頭痛(39.7%)、ざ瘡様皮膚炎(30.2%)、月経が不規則になる(28.6%)、気管支炎(25.4%)、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症 (22.2%)、ざ瘡(19.0%)、口唇炎(17.5%)、腹痛(17.5%)、白血球数減少(14.3%)など。

・シロリムスは胎児に影響を与えるため、内服中は避妊が必要です。出産後も母乳に薬が出てくるため授乳を避ける事が必要です。

・傷の治りを悪くするため、大きな手術の際にはシロリムスの一時中止が必要です。

その他の治療

・呼吸する力が落ちてきて、体の酸素を十分に保てないようであれば酸素療法を行います。また、悪化し一定の条件を満たす場合、肺移植の検討が必要になります。

・気胸が起こった場合、胸腔ドレナージ(胸にチューブを挿入し、溜まった空気を抜く)や手術が必要な場合があります。

・腎の血管筋脂肪腫は大きくなると、破裂の危険があるとされ, 泌尿器科との連携が必要となる場合があります。

・その他、肺以外の病気についても、専門科への受診が必要となることがあります。

医療費助成制度

LAMは厚生労働省の指定難病で、重症度II 以上が医療費補助対象です。ただし、治療をする場合など医療費が高額となる場合には、軽症(重症度I)では、軽症高額該当制度が利用可能なことがあります。

 

希少肺疾患外来(当院)

LAMは稀な疾患であるため、専門的な診断、治療を行うことができる施設は限られており、全国各地からLAMの患者さんが受診されています。