サルコイドーシスとは
サルコイドーシスは全身の様々な臓器に類上皮細胞肉芽腫と言われる病変を認め、様々な症状、障害を示す原因不明の疾患です。
疫学
男性より、女性に多く、最近、若年発症のサルコイドーシスが減少し、高齢発症例が増えてきています。年齢分布は女性では20〜34歳に第一ピーク、50〜60歳に第二ピークを示し、男性では20〜34歳に一つのピークを示します。
症状
●発見動機は、健康診断が28.0%、自覚症状が56.5%です。診断時無症状は26.2%です。
●症状のある方では、視覚症状(ぶどう膜炎)28.8%、咳嗽18.3%、息切れ12.4%、皮膚症状(皮疹)9.6%、倦怠感6.6%、発熱6.1%に認められました。その他、病変ができる部位に応じて様々な症状が報告されています。
サルコイドーシスの診断がある方で、以下の症状は特に注意が必要です。
●眼の病気の具体的な症状:かすみ、まぶしく見える、視力低下、虫が飛んでいるように見えるなど。これらの症状を認めたら、眼科へご相談ください。
●心臓の症状:これまでに感じたことのない動悸、めまい、立ちくらみ、失神、手足のむくみなど。これらを認めたら、循環器内科へすぐにご相談ください。
病気の経過
●経過はいずれの臓器病変においても自然によくなる、横ばいで残る、慢性的に悪化など様々です。自然に良くなっても再発することも多いです。
●必ずしも投薬治療を行いませんが、目の病変は放置すると失明に至る可能性があり、心臓病変から死亡する可能性があるので、病変に応じて適切に対処することが必要です。
●肺の病気についても、多くの患者さんでは治療は要しませんが、症状や呼吸機能障害から治療が必要な方、無症状で経過しながら、病状が進行し、重症になるまで気付かない方など様々なかたがおられます。重症化する前に適切な治療を行うことが必要です。
●状況に応じて各診療科での専門的な治療も必要になりますので、定期的な医療機関で観察が必要です。
病因
患者さんの体質と何らかの原因物質に対するⅣ型アレルギー反応が関係すると考えられています。原因物質は明らかになっていませんが、非結核性抗酸菌(マイコバクテリウム)やアクネ菌の可能性が考えられています。
診断のポイント
● 臨床症状や検査所見が多彩なため、全身の系統的な診察および総合的な判断が重要です。
● 診断に際しては、組織学的に肉芽腫を証明し、多臓器病変(2臓器以上)であることが重要視されています。
●我が国の診断基準(2015年)に従い診断します。詳細は難病情報センター サルコイドーシス(指定難病84)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/266を参照ください。
重症度に応じて公費助成の対象となります。
検査所見
胸部画像所見異常が86.%にみられ、両側肺門リンパ節腫大は75.8%、眼所見は54.8%、皮膚所見は35.4%、心臓検査所見異常は23.0%にみられます。
サルコイドーシスの診断や経過観察で、下記のような検査を行います。
当院で行っている検査項目
血液検査 | 一般血液、肝機能、腎機能、ACE, リゾチーム, 可溶性IL-2R, |
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尿検査 | 一般、沈渣、必要に応じてCa定量 |
生理検査 | 精密肺機能検査、心エコー、心電図、必要に応じてホルター心電図(24時間)、6分間歩行検査、動脈血液ガス分析 |
画像検査 | 胸部高分解能CT、PET(心臓病変を強く疑う所見を認めた場合)、腹部C T、腹部エコー |
気管支鏡検査 | 気管支肺胞洗浄(BAL)(細胞分画、CD4/CD8比)、経気管支肺生検(TBLB)は上肺野3個、下肺野3個程度の肺組織を採取、クライオ生検による肺生検、超音波気管支内視鏡ガイド下針生検によるリンパ節生検 |
治療
● 多様な病状を呈するので、病状を考慮して治療適応を決めています。肺病変のみや肺門リンパ節腫大のみの場合、無治療で経過観察をすることが多いです。
● 急性の変化や高度の臓器障害がみられる場合、心臓サルコイドーシスや眼サルコイドーシスの場合、各臓器の専門家に相談の上、治療が必要となります。
● 肺サルコイドーシスの治療は、自覚症状、呼吸機能障害がある場合に、ステロイド治療を検討します。
●治療を行う場合、主にステロイド剤を使用します。免疫抑制剤と言われる薬剤もステロイド剤の代わりに、または、ステロイド剤と併用して用いられる場合があります。治りの悪いぶどう膜炎に対しては、一部のTNFα阻害剤が保険で使用可能です。