間質性肺炎

間質性肺炎とは

肺は柔らかい小さな袋(肺胞:はいほう)の集まりで、その中には空気をたっぷり含んでいます。
小さな袋の壁は大変薄いのですが、その中には様々な細胞とともに血液が流れる血管が含まれています。
私たちは、無意識のうちに肺に空気を出し入れしていますが、肺の中では肺胞の薄い膜を通して、空気から血液中に酸素が入り、逆に老廃物である二酸化炭素が空気中に放出されています(いわゆる肺呼吸)。
普通の肺炎と言えば、ばい菌が肺の中で増加し発熱、咳、痰が出て、レントゲンでは肺が白くなります(通常一部)。
抗生物質で治療されて軽快します。
しかし、抗生物質が効きにくく、胸のレントゲン写真で左右の肺全体が白くなる場合“間質性肺炎”を疑う必要があります。
“間質性肺炎”は何らかの原因(関節リウマチ、皮膚筋炎、全身性強皮症などの膠原病、なんらかの異物の吸入、薬剤など)で肺胞の壁の中や周辺に“炎症”(皮膚で言えばやけど、肝臓で言えば肝炎のようなもの)が起こり、細胞やコラーゲンなどが増加し壁が厚くなる病気です。
そのため咳が出たり、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなります。
“炎症”が治った後も傷が残り、肺が固くなる場合があります。
これを“肺線維症”と言います(図1 参照)。
皮膚で言えばケロイド、肝臓で言えば肝硬変が相当します。
肺がどんどん固くなり、膨らみにくくなると呼吸を維持出来なくなる事があります。

“特発性間質性肺炎”は“間質性肺炎”の中でも原因のわからない病気の一群です。
2002 年国際的に分類や診断基準が統一され、国内でも2004 年に統一されました(第4次改訂)。
特発性間質性肺炎は、現在以下の7 種類に分類されています。

 (1) 特発性肺線維症(図2)
 (2) 非特異性間質性肺炎
 (3) 特発性器質化肺炎
 (4) 急性間質性肺炎
 (5) 剥離性間質性肺炎
 (6) 呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患
 (7)リンパ球性間質性肺炎

多くの疾患はゆっくり進行しますが、急性間質性肺炎は病気の進行が早く検査も十分に出来無いことがあります。
ゆっくり進行しながら急に悪化する場合(急性増悪)や肺癌の合併などが問題になっています。
7 つの病気で治療方針、治療効果や予後(どれくらい肺がもつか)など異なり、特発性間質性肺炎の中のどの疾患であるか分類することは重要です。高分解能コンピューター断層撮影(HRCT)、気管支鏡野などで診断がつかない場合は、手術による肺生検(胸腔鏡での肺生検、開胸肺生検)を行い、その結果を踏まえて総合診断が必要になることがあります。

 

どのような人がかかりやすい?

最近の報告では医療機関にかかっている方は10 万人あたり10〜20 人程度と言われていますが、初期の段階では無症状であるため、実際はもっと多いと考えられています。
また最近患者数が増加しているとも言われていますが、近年、胸部CT が普及し早期に発見される事も多くなったためかもしれません。
7 つの病気のなかでは、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎の頻度が多く、それ以外はあまり多くはありません。
7 つの疾患のうちもっとも患者数が多い特発性肺線維症は50 才以上で症状を認めることが多く、男性は女性よりやや多いようです。
非特異性間質性肺炎はもう少し若い時期に症状を認めます。
剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患は喫煙者に多いと言われています。

 

病気の原因

特発性間質性肺炎の原因はわかっていません。
剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患では喫煙との関連が指摘されています。

一般的には遺伝するとは言われていませんし、遺伝形式は証明されていません。
まれに家族性に発症したとの報告もあります。

 

症状について

はじめは多くは無症状ですが、空咳(痰のない咳)や、運動時(あるいは坂道や階段で)の息切れで気付かれます。
進行すると少しの動作でも息切れを感じるようになります。
指の先が太鼓のバチのように太くなることがあります。

 

治療について

特発性間質性肺炎の中の7 つの病気の分類に応じ、そして個々の患者様の状態を考慮して治療方針が決定されます。
病気が極めて安定し、進行してもゆっくりの場合は、症状に対応した治療(咳止めなど)や、無治療で経過を見る事もあります。
明らかに悪化を認める場合はステロイド、免疫抑制剤などで治療します。
最近、特発性肺線維症に対する新しい抗線維化薬(飲み薬)が保険適応になりました。
更に新しい薬の開発も予定され、期待されます。
一般的にステロイドや免疫抑制剤の治療は長期にわたり、副作用対策も必要です。
また風邪の予防、禁煙、規則正しい生活など一般的な日常生活の管理も重要です。
病気が進行し酸素が足りなくなった場合(“呼吸不全”と言います)、酸素療法(在宅酸素療法)が行われ、必要に応じ呼吸リハビリテーションも行われます。
さらに心臓からはいに向かう血管の血圧が高くなったり(肺高血圧)、心臓が弱った場合(右心不全と呼びます)はその治療も行われます。
一定の年齢以下の若い患者様で、治療効果なくかつ一定の厳しい基準を満たす場合は肺移植についても検討される事があります。

病気の経過について

特発性肺線維症では治療にもかかわらず3〜5 年くらいで悪化してしまう場合があります。
非特異性間質性肺炎や特発性器質化肺炎の中には治療に極めて良く反応し予後良好である場合もありますが、軽快増悪を繰り返す、あるいは7〜10 年で徐々に悪化し予後不良となる場合があります。
線維化の強い非特異性間質性肺炎では特発性肺線維症に準じた進行を示す場合もあります。
剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患の予後は一般的に良好であるとされています。
急性間質性肺炎は急激に発症し予後はあまり良くありません。
特発性間質性肺炎では、風邪などを契機に短期間で急に悪化すること(急性増悪)があり、肺がんを合併する頻度も高いとされています。
特発性間質性肺炎と診断された後、長年経過を追っている間に膠原病等の症状が明らかになり、後で特発性間質性肺炎ではなく膠原病等と再評価される場合があります。
特発性間質性肺炎と診断され、病状が安定していても、定期的な検査と評価を受けることが大切です。