肺高血圧症とは
肺動脈は、全身から心臓へ帰ってきた酸素の少ない血液を肺へ送る血管です。
この肺動脈の血圧が高くなる状態を肺高血圧症といいます。
肺高血圧が進むと、肺に血液を送りこむ右側の心臓に過度な負担がかかり、心臓の機能が低下して全身の血液の流れに障害が生じる「右心不全」という状態になります。
■ 肺高血圧症の分類
肺高血圧症は現在、以下の5つの群に分類されています。
第1群 肺動脈性肺高血圧症
第2群 左心不全など、心臓の左側の疾患による肺高血圧症
第3群 肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症
第4群 肺動脈内に血栓ができる慢性血栓塞栓性肺高血圧症
第5群 原因が明確でない、複合的な要因による肺高血圧症
当院では、呼吸器疾患の患者さんが多いため、第3群の肺高血圧症の方が多くを占めています。
ただし、呼吸困難という症状は他の群の疾患と共通しているため、第1・2・4・5群の患者さんも受診されることがあります。
なお、第1群および第4群は国の指定難病になっています。
■ 肺高血圧症の症状
労作時の息切れ、下腿浮腫、失神など見られることがありますが、これらは他の病気でも見られる症状です。したがって、肺高血圧かどうかを判断するには、追加の検査が必要です。
■ 肺高血圧の診断
胸部レントゲン、胸部CT、心電図、血液検査、呼吸機能検査、心臓超音波検査などで肺高血圧が疑われるかどうかをスクリーニングします。
そのうえで、肺換気・血流シンチグラフィー※などの検査を踏まえ、最終的には右心カテーテル検査を実施して診断を確定します。この検査で、肺高血圧の有無、分類、重症度などが明らかになります。
(詳しくは当院のサイトの「検査について」-「右心カテーテル検査」の項も参照ください。)
■ 肺高血圧症の治療
【一般的支持療法】
利尿剤の投与や在宅酸素療法などが行われます。
【分類に応じた治療】
1. 第1群:肺血管拡張薬による治療が中心です。
2. 第2群:原因となっている左心不全の治療が優先されます。
3. 第3群:肺疾患の治療や、呼吸不全がある場合は酸素吸入を行います。間質性肺疾患に伴う肺高血圧に対しては吸入の肺血管拡張薬(トレプロスチニル)が適応となりました。病態に応じて、他の薬剤の使用が検討されることもあります。
4. 第4群:抗凝固薬(例:ワーファリン)、手術(肺動脈内膜剥離術※)、カテーテル治療(肺動脈形成術※)などが考慮されます。
※肺換気・血流シンチグラフィー、肺動脈内膜剥離術、肺動脈形成術は、当院では実施していないため、必要に応じて専門施設をご紹介します。
■ 参考資料
患者向け冊子
肺高血圧症を知る (jpcphs.org)
難病情報センター(一般向けの病気の解説)
肺動脈性肺高血圧(第1群)
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(第4群)
関連学会情報
日本肺高血圧・肺循環学会
当院は、この学会が支援する、肺高血圧症患者の臨床研究 「肺高血圧患者レジストリ」(JAPHR) の参加施設です。
この学会ホームページには「肺高血圧症の診療を実施している施設紹介」が掲載されており、
当院は「肺疾患に伴う肺高血圧症の診療施設」として紹介されています。