薬剤性肺障害とは
お薬を点滴したり、内服することが原因で肺に障害が生じる病気です。
典型的なものとして、お薬が原因で肺の肺胞や間質領域に白い影を認める肺炎があります。
喘息様の発作や、血管の炎症などが起こることもあります。
お薬としては、医師が処方した薬の他、漢方薬やサプリメント、栄養食品などを含みます。
わが国の薬剤性肺障害の動向として、喫煙歴などリスク因子のある中高年男性に多く、原因となるお薬として抗がん薬(分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬含む)が過半数
(56%)を占め、関節リウマチの薬 (13%)、漢方薬 (10%)がそれに続きます(日本呼吸器学会 薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第2版、2018年)。
一般的な肺炎の治療として使用された抗菌薬(抗生物質)によって薬剤性肺障害が生じることもあります。
薬剤性肺障害の分類
薬剤性肺障害が発症する仕組みにはお薬が肺の細胞を直接障害する場合(細胞障害性)と、お薬に対する過敏性(アレルギー反応)による場合が考えられています。
前者の場合は使用する薬の量や投与期間と関連するといわれており、総使用量が一定の基準を超えると発症しやすくなりますが、個人差もあります。
後者の場合はもっと個人差があり、わずかしかお薬を使用していなくても発症することがあります。
症状
咳、発熱、だるさ(倦怠感)、息切れなどがあり、喘鳴や血痰がでる場合もあります。
発症時期としては一般的には2~3週間から2~3か月で発症することが多いとされていますが様々です。
診断・検査
胸部エックス線検査や胸部CTなどでも一般の肺炎と区別が難しいことがあります。
血液検査で好酸球とよばれる白血球が増加している場合は、薬アレルギーによる薬剤性肺炎を考える手がかりとなります。
他の病気が隠れていないかどうかを確認するために、気管支検査を行ったうえで、薬剤性肺障害の可能性が最も高いと考えることもあります。
診断するうえで重要なことは薬を使用しているということです。
医師が処方するお薬の他にどのお薬でも引き起こす可能性があります。咳や発熱、息切れなどで病院を受診される場合は、どのようなお薬を服用しているか(可能であればどんなお薬をいつから使用しているか)を伝えるようにしてください。
また、自身で開始されたサプリメントや栄養食品などがある場合もお伝え下さい。お薬手帳を持参されることもお勧めです。
治療
薬剤性肺障害の可能性が強く考えられた場合、その薬を中止して肺炎がよくなるかどうかをみていきます。
中止するだけで順調によくなることもありますが、あまりよくならず、悪くなっていく場合もあります。
呼吸障害の程度が強い場合にはステロイド薬による治療や酸素療法や人工呼吸器による治療が必要となることもあります。
補足
薬剤性肺障害についてより詳しく書いた日本呼吸器学会が医師向けに作成した『薬剤性肺障害の評価、治療についてのガイドライン』という資料があります。
こちらの資料を参考にこの文章も記載しています。