喀血とは
肺や気管・気管支からの出血のことを喀血といいます。
痰の中にうっすら血液が混ざる程度のもの(血痰)から、コップ数杯程度の大量喀血まで様々です。多くは一時的に血が止まりますが、たくさん出血があってすぐに気道が詰まってしまう場合や元々肺の持病で肺機能が低くうまく吐き出せない場合は、酸素が必要となる場合(=呼吸不全)や窒息のためすぐさま命に関わることもありえます。
喀血の原因となる病気
【肺に持病があるケース】
肺がん、気管支拡張症、慢性気道感染症(非結核性抗酸菌症・肺結核・肺アスペルギルス症など)、昔かかった肺結核や細菌性肺炎の古傷など。
【肺に持病がないケース】
レントゲンや胸部CT検査で肺に持病がなく肺の血管(特に気管支動脈)に異常が見つかる場合を“特発性喀血症(とくはつせいかっけつしょう)”と呼びます。喀血の治療を必要とする患者さんの1-2割がこの特発性喀血症で、喫煙者に多いです。
これらの疾患が喀血の原因になることが多いですが、その他にも様々な疾患で喀血は起こりえます(表1)。
表1
感染症 | 慢性気道感染症(非結核性抗酸菌症・アスペルギルス・結核など) 急性気道感染症 |
---|---|
気管支拡張症 | 気管支拡張症 |
腫瘍 | 悪性腫瘍(肺がん),良性腫瘍 |
血管疾患 | 気管支動脈瘤,血管腫,肺動静脈奇形,胸部大動脈瘤の破裂 |
循環器疾患 | 心不全,肺高血圧症,肺血栓塞栓症 |
自己免疫疾患 | 血管炎,肺胞出血 |
血液疾患 | 血小板減少,血液凝固異常 |
外因性 | 外傷,異物,放射線,薬剤,毒物 |
その他 | 特発性喀血症 |
受診までの流れと受診後の検査・診断
初めて当院を受診される方は新患外来で初回診察をさせていただきます。
このときかかりつけ医からの紹介状や過去のレントゲン・CT検査の画像があれば診察がスムーズになりますので、まずかかりつけ医の先生にご相談ください。
病院を受診する頃には喀血が止まっている、ということも多いですので携帯電話などで写真を撮ってきていただくと症状の様子が伝わりやすくなります。
また当院に元々通院されている患者さんは当院担当医外来で相談いただいた後、必要があると判断された場合造影CTを検査の上、喀血専門外来にご紹介させていただきます。
なお、口から出血するほかの病気(鼻の奥・歯茎・のど・食道・胃からの出血)との鑑別も重要ですので、外来で耳鼻科医や消化器内科医と連携する必要もあります。
喀血専門外来では、問診を行いつつ採血検査・レントゲン検査やCT検査で喀血の原因になっている肺の持病を調べ、それぞれのご病状にあった治療方法を探ることが主になります。造影CT検査(※)では出血の原因になっている異常血管があるかどうか探します。
なお、当院の喀血外来を受診される場合にはあらかじめホームページ上で問診項目を入れていただくことで診察前に医師に状況をあらかじめ伝えることが可能ですのでご利用ください
※造影CT検査とは造影剤を用いた特殊なCT検査のことです。腎臓機能が悪い方、以前に造影剤に対して重度のアレルギーのある方実施できないこともありますので診察時にお伝えください。
喀血時の対応と治療
・血痰,少量喀血(おちょこ1杯未満;20cc未満)
⇒止血剤の内服,外来で様子を見ることが多い
・中等量喀血(おちょこ1杯以上;20~200cc未満)
⇒全身状態に応じて入院を検討
・大量喀血(コップ1杯以上;200cc以上)
⇒基本的に緊急入院が必要となることが多い
喀血の治療は、原因となっている病気によって様々です。
肺癌が原因の場合は、肺癌そのものの治療が基本となります。
その他の場合では、肺の持病の治療に加えて、『気管支動脈塞栓術(BAE)』とよばれるカテーテルで血管を詰めるという方法もあります(当院では、中等量から大量の喀血があって、かつ造影CT検査で治療できそうな血管が見つかった場合には、カテーテル治療を行うことを外来で検討しています)。カテーテル治療が困難な場合、手術や気管支鏡治療を試みることもあります。