皮膚筋炎・多発筋炎とは
多発筋炎は骨格筋の炎症により四肢近位筋(二の腕や太ももの筋肉)や体幹などの筋力低下を来す原因不明の慢性炎症性疾患であり、このような筋炎症状に加えて特徴的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ばれます。
また、筋症状がなく、特徴的な皮疹のみを呈する場合もあります(無筋症性皮膚筋炎)。
皮膚筋炎・多発筋炎は小児にも発症することがありますが、成人の好発年齢は45-64歳と報告され、男女比は1:2.7と女性に多いとされています。
症状
亜急性の経過(1-3か月)で生じる四肢近位筋や体幹、咽頭筋や口頭筋(ものを飲み込みときに使う筋肉)の筋力低下が主な症状です。
具体的には椅子から立ち上がる、髪をとかす、階段をのぼるなどの動作がしづらくなります。
また、筋痛をしばしば認めます。
皮膚筋炎の場合には、目の周囲の皮疹(ヘリオトロープ疹)、手指関節の背面や肘の伸側の皮疹(ゴットロン丘疹、ゴットロン徴候)などの特徴的な皮疹を認めます。
また、それ以外にもV徴候(前上胸部)、ショール徴候(肩から上背部)、ホルスター徴候(大腿部外側)、メカニックハンド(手指の指腹)などの名称がついた様々な皮疹が認められます。
関節痛も約1/3の患者さんに認められます。
全身症状として、発熱、倦怠感、体重減少が見られる場合もあります。
また、約半数の患者さんで間質性肺炎を合併するといわれており、咳や労作時呼吸困難が主訴になることもあります。
診断・治療
診断は皮膚所見、関節痛、筋力低下、筋痛などの理学所見に加えて、血液検査でのCPKやアルドラーゼといった筋肉由来のタンパク質や炎症反応の上昇、自己抗体の有無により診断されます。
これらで診断がつかない場合には専門施設にて筋電図や筋生検が行われることもあります(当院では、この2つの検査は実施していません)。
治療の基本はステロイドおよび免疫抑制剤です。
筋炎の病態と密接に関連する自己抗体(筋炎特異的抗体)がいくつか報告されており、抗体ごとに症状や病態が異なり、治療にも影響します。
また、背景に悪性腫瘍が隠れていることがしばしばあり(特に皮膚筋炎の場合)、診断時から2-3年は悪性腫瘍の合併に注意が必要です。
肺とのかかわり
皮膚筋炎・多発筋炎は上記のように約半数の患者さんで間質性肺炎を伴います。
急速進行性かつ治療抵抗性で1か月ほどの経過で致死的になる患者さんから、慢性経過で治療には反応するものの再発を繰り返し数年かけて緩徐に進行する患者さんまで、病気の経過は患者さんによってさまざまです。
また、頭筋や口頭筋の筋力低下による誤嚥性肺炎がみられるケースもあります。
稀ですが、呼吸筋の低下により呼吸困難が生じることもあるとされています。