膠原病と膠原病の肺病変

膠原病とは

膠原病は免疫異常を背景に、皮膚、関節、筋肉および内臓諸臓器など多臓器に障害をきたす全身性疾患です。膠原病は一つの疾患ではなく、上記の特徴を有する数種類の疾患をひとまとめにして表した疾患群です。
代表的な膠原病には関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎・多発筋炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスおよび各種血管炎などがあります。
膠原病の診療は主にリウマチ・膠原病内科医によって行われますが、内臓病変の一つとして肺病変を呈することがあり、その場合は呼吸器内科による併診が望まれます。

 

症状

各膠原病によって症状は異なりますが、皮膚、関節、筋肉に症状がでることが多く、疾患によっては発熱も伴います。

 

診断・治療

診断は疾患ごとに分類基準が存在し、身体所見や血液検査での自己抗体の検出が重要になります。典型例では診断が容易ですが、どの膠原病も多様性に富むため分類基準を満たさないこともしばしばみられ、リウマチ・膠原病内科医による評価が望まれます。また、一つの膠原病に別の膠原病が合併することもあり、注意が必要です。治療も疾患ごとに異なりますが、大半の疾患はステロイドや免疫抑制剤を主体とした治療がなされます。

肺とのかかわり

上記のように膠原病には肺病変を合併することがあります。肺病変としては間質性肺炎が最も多く、その他、気道病変、肺を包む膜にできる胸膜病変、肺の中に出血をきたす肺胞出血などがあります。膠原病として診療を受けている患者さんに肺病変が生じるケースもありますが、肺疾患の検査のため受診した患者さんに膠原病の要素が隠れている場合もあります。また、肺疾患の患者さんにおいて、当初は膠原病の要素がなくても経過中に新たに出現してくる場合もあります。
 さらに、膠原病はそれ自体の肺病変に加えて、膠原病に対する治療薬による薬剤性肺障害も来します。また、膠原病の治療薬により免疫力が低下している場合が多いため肺感染症も健常人と比較しても高率に起こし、症状や検査所見も非典型的になるため呼吸器内科による専門的な加療が望まれます。

 

膠原病の肺病変の治療

膠原病の肺病変の治療は非常に複雑で、肺病変と膠原病の両方を考慮して行われます。
膠原病自体の活動性が肺病変に影響することがあるため、膠原病の活動性が高い場合には膠原病自体の治療が重要になります。
一方で、膠原病自体が落ち着いているにも関わらず、肺病変のみが悪化するケースもあるため、その場合は肺病変の種類や病態に基づいた治療がなされます。
膠原病の肺病変の治療薬は、ステロイドや免疫抑制剤などの抗炎症薬が主体ですが、線維化が進行するケースでは抗線維化薬が使用されることもあります。
膠原病の肺病変は、膠原病患者さんでの死因の多くを占めるため専門施設での治療が望まれます。