全身性強皮症

全身性強皮症とは

強皮症とは、皮膚・肺・消化管など全身の臓器が硬化する(線維で置き換えられる)病気です。硬化の程度や進行スピードは様々で、以下に分類されます。

●びまん皮膚硬化型全身性強皮症

皮膚硬化の範囲が広く、全身性の病変を認めます。進行性ですので、しばしば、早期の治療が必要とされます。また、間質性肺炎(肺が硬くなる病気)を合併する頻度が高いとされています

●限局皮膚硬化型全身性強皮症

皮膚硬化の範囲が手指に限局し、進行は緩やかです。長期の経過で肺高血圧(肺の中の血管の血圧が上がる状態)が進行する場合があります。

 

症状や異常所見

●レイノー症状:冷たいものに触れると手指が蒼白~紫色になる症状で、冬に多くみられ、初発症状として最も多いものです。

●皮膚の硬化:指の腫れぼったい感じから始まり、皮膚が硬くなって、摘み上げにくくなります。皮膚の硬化は、典型的には手指から始まり、手の甲、前腕、上腕、胴体に広がります。手の皮膚が硬くなるため、関節のこわばりを自覚することもあります。肘や肩の関節にも同様の症状を示すことがあります。

●息切れ:間質性肺炎という肺組織が硬くなる病気が出現した場合、肺の中の血管が細くなり肺内の血圧が上昇(肺高血圧と呼びます)した場合、動いた際に息切れを自覚します。安静にしていると症状が軽くなるので、放置してしまいがちですが、程度によっては命に関わるリスクもあるので、早めにご相談をいただくことが重要です。

●逆流性食道炎:食道が硬くなるため、胃酸が食道に逆流して胸焼け、胸のつかえを自覚します。

●腎機能障害:様々な原因で腎臓の働きが低下します。特に、急激な血圧上昇とともに腎臓の働きが悪化した場合、腎クリーゼと呼ばれ、緊急の治療を要します。血圧上昇とともに、頭痛、吐き気を認めた場合、すぐに主治医にご相談ください。

●その他:関節痛、便秘、下痢、心外膜炎(心臓の周りの膜の炎症)、心不全など様々な臓器に異常を起こし、多彩な症状を示します。

 

診断

手指を超える両側性の皮膚硬化、爪周囲の毛細血管異常、手指先端の潰瘍、間質性肺炎、血液検査による抗体(全身性強皮症の可能性を示します)の検出などを用いて総合的に診断します。

 

治療

完治させる薬は今のところありませんが、病状に応じて様々な治療が行われています。
●ステロイド:少量。多量のステロイドは腎臓に好ましくない場合があります。
●免疫抑制剤
●胃酸を抑える薬:逆流性食道炎による胸焼けに対する治療
●血管を拡張させる薬

肺とのかかわり

●強皮症は間質性肺炎と肺高血圧症を合併することが多く、強皮症患者の死因の多くを占めます。
●間質性肺炎に対しては、免疫抑制剤や少量のステロイド剤が試みられます。ニンテダニブ(商品名:オフェブ)という薬で肺が硬くなる変化を緩やかにできることが明らかとなっています。下痢や肝機能障害の副作用が問題となる場合もあります。改善させる効果はないので、進行してからではなく、適切な時期に開始することが勧められます。
●肺高血圧も難治性の合併症であり、病態や重症度に応じて治療が検討されます。